皆様 盛夏の折、いかがお過ごしでしょうか。 私は6週間に渡るヨーロッパ生活を終えようとしております。
今回は7都市を、全て1人での移動と、
不安を抱えながらも、災難に遭うこともなく、
持参した風邪薬や胃腸薬のお世話になることもなく、 昨夜、最後のリサイタルを、スペインのペニスコラ・バロック音楽祭で行いました。
今まで数々の大御所演奏家達が演奏してきた、
この由緒あるバロック音楽祭に呼んで頂き、本当に夢のような一夜でした。
その前はイタリアで20日間ほど過ごしていました。 最初はトスカーナ地方にある、フィレンツェから2時間ほど離れた、
小さな村での滞在。 ここは、通称「チェンバロ村」と呼ばれ、夏になると、 この人口200人の小さな村(端から端まで歩いても10分もかかりません…
郵便局は、週に2回の午前中しか営業してないんですよ)に、 世界各国からからチェンバロ奏者が集まります。
よって日常使う言語も、イタリア語40%、フランス語30%、
英語30%くらいの割合になり、私の中でも言語がこんがらがり、
『イタリア語の単語は出てくるけど、英語で何ていうんだっけ…』という
可笑しな事態になっていました…
↓長年の師匠であるスキップ・センペ氏と。
私も、私の師匠と共に、一日8時間以上も、
他のチェンバリスト達の演奏を聴き、また弾き、 毎日「耳が、頭が、おかしくなりそう…!」と思いながらも、
テレビもエアコンもない(外は35度ほどです…)中での2週間の缶詰状態。 朝から晩までチェンバロ漬けのうえ、 その後も夜中まで延々と音楽談義が続くことも。 そのような状況がとっても幸せに思えるのですから、
本当に音楽家というのは変わった生き物ですね…
その後トリノとミラノに移動して、
最後の地、スペインのペニスコラにやってきました。
ペニスコラは地中海に面していて、
「スペインのカンヌ」とも呼ばれるほど風光明媚な土地で、
スペインきってのビーチ・リゾートです。 ヨーロッパ各国から観光客が押し寄せていて、 着いたときは、目の前に開けた海を見ながら、
『本当にここで弾くのかしら?』と驚きでした。
しかし、ペニスコラにはビーチとともに、
ペニスコラ城(14世紀に聖堂騎士団によって築かれた)がある旧市街が
とても有名な所で、 私のリサイタルも、ビーチから息せき切って10分ほど登った所にある、
石造りのペニスコラ城内で行われました。
コンサート前に、そのお城で真面目に(!?)練習をしていると、
お城は観光地の一つなので当然と言えば当然なのですが、 リゾート客が次から次へと覗きに来られ、
カメラのフラッシュがひっきりなしにたかれ、 普段の「練習は1人で集中して黙々と…」という状態とは
かけ離れた事態に…! 『これもチェンバロを知ってもらうきっかけだと思って…我慢・我慢…
集中…』と言い聞かせながら、普段と状況が違う中、
コンディションを整えることになりました。
そして、その甲斐あってか(!)、コンサートには満員のお客さんがお越し下さり、 私はまたしても、暑さと闘いながらの、汗だくの演奏となりましたが、 最後にはブラヴォーという掛け声や、スタンディング・オベーションもして下さり、
嬉しい限りでした。
久し振りにニューヨークに戻って、ニューヨークの速いペースに順応できるのか、
若干心配ではありますが、 この好調な状態のまま、日本公演に向けて、またひと頑張りです。 月末に東京・兵庫でお出会い致しますのを、心待ちにしております。 スペインより 濱田あや